孤児院で育った少女・リチェルは、
十二歳の時その歌声を見初められ隣国の貴族の楽団に引き取られる。
けれども引き取られた屋敷の当主が病死した事で待遇が一変、
日々屋敷と楽団の雑事をこなす下働きとして暮らしていた。
そんな暮らしが何年も続いたある日、
丘で隠れて歌っていたところを一人の青年に見つかってしまう。
「俺はただ、君の歌が聴きたくて降りてきたんだ」
そう言ったヴァイオリン弾きである青年は、リチェルにまた歌を聴かせてほしいと告げた。
それをきっかけに、リチェルは少しずつ歌うことの楽しさを思い出していく。
これはある目的で旅を続ける貴族のヴァイオリン弾きと
歌うことを愛する孤児の少女の優しい旅と恋のお話。